#31 「ステータスに目が眩んだ日のこと」
SPECIAL COLUMN
#31 「ステータスに目が眩んだ日のこと」/妹尾ユウカ
ラジオやSNSでどれだけ毒づいていたって、通りすがりの犬を見て、つい「可愛い」と口にしてしまうのだから、私もそこらの女である。
婚約指輪やアフタヌーンティーに興味がないからといって、自分のことを「ちょっと男っぽいのかも」なんて本気で思っていた時期もあったが、それは気取った思い込みで、私はちゃんと女だった。
「付録に目が眩んでないか?」
24歳の頃、よく遊んでいたホビーメーカーの御曹司。
当時、共通の友人から「彼のどこが好きなの?」と聞かれて、私は「顔と身長」と答えた記憶がある。決して、豪快に思われたかったわけではなく、本心のつもりでそう答えた。でも、今思えばあれは豪快な嘘だった
だって、もし彼とまったく同じ姿かたちをした、東中野あたりのシーシャ屋の店員に出会ったとしても、私は惹かれなかったはずだ。気にも留めなかったと思う。
つまり、私が彼に向けていた「好き」は、土台となるステータスありきのもので、それに眩んで、ただ贔屓目になっていただけなのだ。
これでは、「女さん」と揶揄されたって、反論の余地がない。いくら過去とはいえ、自分の軽薄さが恥ずかしい。
「女さんの言い訳を聞いて」
けれど、社会的地位の高い男が、それを理由に持ち上げられるのは、仕方のないことでもあると思う。
むしろ、そのほうが、彼らにとっても都合がいいのではないだろうか。
もし、女が男の社会的地位になんの価値も見出さなくなったら?
シンガーソングライターは“クラスの端にいたやつ”に逆戻りし、芸人は地方へ行っても、今晩抱く女に困窮することになる。
外資系サラリーマンもYouTuberも、FIREへの憧れがきっと少しだけ薄れるはずだ。
そのせいで、さらに日本は不景気となり、石破政権の支持率は、ついに20%を切ってしまうかもしれない。女の軽薄な選球眼は、男の努力のモチベーションにも繋がる。
そして、それはこの国の経済にも、少なからず影響を与えるかもしれない 。
そう考えると、私は軽薄な女でありながら、日本を支えるチアリーダーでもあるのかもしれない。
完全に踊らされている。
妹尾ユウカ
独自の視点から綴られる恋愛観の毒舌ツイートが女性を中心に話題となり、
『AM』や『AERA.dot』など多くのウェブメディアや『週刊SPA!』『ViVi』などの雑誌で活躍する人気コラムニスト。
その他、脚本家、Abema TVなどにてコメンテーターとしても活動するインフルエンサー。