#23「まともだと思ってた奴ほど変だわ」/妹尾ユウカ
SPECIAL COLUMN
#23「まともだと思ってた奴ほど変だわ」/妹尾ユウカ
自分と他人との間に共通点や共感できる事柄が多いほど、その相手に好感を抱いたり、信用しやすくなったりすると思うのだが、一方でそういった相手にほど、驚かされることも多いような気がしている。
あのルームウェア
ある日の夕方、自宅でこの本の執筆作業を進めていた時のこと。ピンポーン♪「着払いでお荷物が届いてます」そう言って、ダンボールを抱えた配達員が玄関先へとやってきた。
この前日、ネット通販で大量の日用品を購入したばかりだったが、それらは全て事前決済で購入したはず。「もしや、これは詐欺では?」数日前にクレジットカードを不正利用されていたことが発覚したばかりの私は、詐欺の可能性を疑った。
しかし、届いたダンボールの側面には、親しい友人がデザイナーを務めるブランドの名前が書かれており、請求された金額も8千円ほどだった。詐欺にしては少額すぎるが、それこそが詐欺師のやり方か。気になる点はあったが、「まあ大丈夫か」という詐欺に遭うにふさわしい人間の発想で荷物を受け取ることにした。
すぐさまカッターを手に取り、勢いよくダンボールに滑らせると、中には見覚えのあるルームウェアが入っていた。注文した覚えはないが、前述したデザイナーの友人がこのルームウェアについて、インスタのストーリーで「これは商品化アリ?ナシ?」といったアンケートを取っていたことは記憶していた。
ひとまず詐欺ではないことが分かりほっとしたが、誤発送がトラブルであることに変わりはない。すぐに友人に連絡をして、送り間違えているという旨を伝えた。
倫理観どないやねん
すると、「アンケートの時にアリに投票してくれてたから、30%オフで送ったんだけどいらなかった?」とまさかの返事が返ってきた。
確かに「アリ」に投票したことは事実だが、購入意思や金額に関する確認をせず、いきなり自宅に着払いで送りつけるとはいかがなものか。"親しき仲にも礼儀あり"ではないのだろうか。
他者に自分と同じ「普通」を求め、そうではないと知り落胆するのは少し傲慢な気もしたが、彼女を近しく思っていたが故にすんなりとは解せない違和感だった。けれど、彼女を問いただすようなことはしなかった。
これは互いの価値観の違いと私が彼女求めてしまった「普通」による問題である。
例えるなら、外国人の友人が食前に「いただきます」と言わなくても気にならないのに対し、同じ日本人が言わないことには違和感を覚えるようなもの。人に寛容でいるためには、相手がどんなに近しい存在であっても、「完璧に同じ普通を持った人はない」という前提を忘れてはならないのだろう。
最近の愛読書
最近、『ハローキティの一日一善』と『クロミの歎異抄』という本から仏教の教えをかじったおかげで、そんな立派なことを思える私がいたが、「お前、カニが好きだってよく言ってたよな?正月に着払いで送ってやろうか?」と思う私も全然いた。悟りへの道はまだまだ遠いのであった。
妹尾ユウカ
独自の視点から綴られる恋愛観の毒舌ツイートが女性を中心に話題となり、『AM』や『AERA.dot』など多くのウェブメディアや『週刊SPA!』『ViVi』などの雑誌で活躍する人気コラムニスト。
その他、脚本家、Abema TVなどにてコメンテーターとしても活動するインフルエンサー。