#20「青山霊園で眠れたらいいね」/妹尾ユウカ
SPECIAL COLUMN
#20「青山霊園で眠れたらいいね」/妹尾ユウカ
港区ではしゃぐ大人たちは隠キャである。
社会人にもなって、人様を隠キャ・陽キャに分類し、あーだこーだと言うのはいかがなものかとは思うが、これは港区の民について語る上で重要なポイントである。
六本木、西麻布、麻布十番。港区を代表するこれらのエリアには、都会的で洗練されたイメージがあるかもしれないが、実際にこの地に蔓延る人々は主に地方都市や神奈川、千葉、埼玉出身の中途半端な田舎者。おそらく、彼らは学生時代のヒエラルキーやコンプレックスを解消すべく、夜な夜な港区に集まっている。
陰キャの逆襲
まず、育った場所はどこであろうと、学生時代から陽キャの部類であり、いわゆる「 一軍」と呼ばれるカーストの頂点にいた者たちには、上京を望む理由がない。なぜなら、現状を変えたいと切に願うほどの退屈や挫折、劣等感とは無縁であり、やり直したい交友関係や消したい過去も特にないから。もちろん、陽キャの中にも芸能活動等を理由に上京を選択する者はいるが、そこで挫折を経験しない限り、彼らが港区で遊び呆けてしまうことはない。
要するに、上京して地元にいる時よりもイキイキとしている奴らの大半が陰キャなのだ。1800を片手に持つことは陰キャにもできるが、強い地元愛を持つことは陽キャにしか出来ない。全身ハイブラで騒ごうが、レセプションで気取ろうがその事実は変わらない。
しかし、これは陰キャ・陽キャどちらか一方が偉いとか優れているといった話ではない。あくまで一長一短である。私の考察通り、港区に蔓延る人々が隠キャなのであれば、現在、日本経済の中心にいるのは隠キャであり、SNSで羨望の的となっているのも陰キャなのだ。YouTuberなんて陰キャの逆襲でしかない。
陽キャの青春には敵わない
ただ、恋愛の観点においては、圧倒的に陽キャの方が優れている。イケメンや美女に相手にされた経験、男女混合での富士急やBBQ、自分発信での集まり。そんな体験を青春時代に正規のお値段で行えた人たちには敵わない。取り戻したい青春がないだけで、陰キャと陽キャではスタート地点が違う。
人は学生時代に手に入らなかった物に執着し続ける。貧乏だった人は金に、ブサイクだった人は顔に。また、そういったコンプレックスを交際相手やパトロンといったアイテムで解消しようとする人も。
それでも青春というものは取り戻せない。
大人になってから、大枚を叩いてラウンジ嬢に相手されようが、葉山の別荘でBBQをしようが、自分主催のバースデーパーティーを盛大に開こうが、陽キャの青春には敵わない。ちなみに、社会人としては立派な方がそういったことをしていると、それだけで全部が台無しに映る。突如、猛烈な雑魚臭がする。けれど、今取り戻そうと足掻くほかに道はないのだろう。
港区ではしゃぐ大人たちの青春を取り戻す決死の旅は、青山霊園に葬られるまで続いていく。
妹尾ユウカ
独自の視点から綴られる恋愛観の毒舌ツイートが女性を中心に話題となり、『AM』や『AERA.dot』など多くのウェブメディアや『週刊SPA!』『ViVi』などの雑誌で活躍する人気コラムニスト。
その他、脚本家、Abema TVなどにてコメンテーターとしても活動するインフルエンサー。