#13「今を生きるって、未来がない人の生き方だよ」/妹尾ユウカ

SPECIAL COLUMN

#13「今を生きるって、未来がない人の生き方だよ」/妹尾ユウカ

「今を生きる」とはそんなに立派なことなのだろうか。将来を見据えたり、計画性を持った生き方をしている人の方が、私にはよっぽど尊く映る。そもそも、この概念が生まれたとされるのは、人間の平均寿命が40歳だった頃らしい。つまり、「今を生きる」とは未来がない人の生き方なのではないだろうか。

もちろん、今こうしてリビングのソファーで、未来について考えているとは到底思えない体勢で、ウダウダとコラムを書いている私が、明日も生きている保証などどこにもない。それでも、私は「明日も生きている」と信じてやまない。なぜかと聞かれれば、「25年間そうだったから」「そんなに人の恨みを買っていないから」「公共交通機関を使わないから」としか言いようがないが、明日も生きていると踏むには十分な理由だ。

明日も生きてしまうから

明日も生きてしまうから、女友達の嫌いな部分を指摘することに躊躇いがあるし、彼氏のバカな友達にだって、必要以上にいい顔をする。貯金だってするし、マンションのゴミ捨てルールも守る。「今を生きている人」というと、エネルギッシュに人生を楽しんでいる、勇敢な人の姿をイメージするかも知れないが、実際のところ、現代では多くがただ無責任で、現実逃避をしているだけである。「今を生きている」という聞こえのいいセリフに甘え、自分の無計画さを正当化し、勢いに任せて判断を誤っている。

ただ、私は「今を生きる」すなわち「今を楽しむ」こと自体を悪いと言いたいわけではない。私だって、世のOLが理想とするような旦那を早々に手放し、親戚が眉をしかめるような男とばかり付き合ってきた。首から上なんて、頬骨と耳以外、手付かずの土地が一つもないほど美容整形をしてきたし、無問題の健康な歯にも、今では模造ダイアモンドが敷き詰められている。これらは全て、今をより楽しむための決断だ。

お楽しみはツケ払い?

しかし、こういった自由にはきちんとツケのような責任が伴う。今の私の歯を例にして言えば、寿命は10年から20年とされているし、この人工的なフェイスラインにもメンテナンスは欠かせない。だから、それを見越した蓄えを持つ必要があり、今限りの安直な判断だけで手を出すことはおすすめ出来ないのだが、近い未来の自分を思いやることもなく、無責任な決断に至る人は多くいる。

パパ活でLady Diorを買ってもらった程度で、満足気に港区をのさばっている奴らもよく聞け。今を生きることには20代後半で死なない限り、どう足掻いても責任が伴う。おまけにそのしわ寄せは、年を重ねて今ほどのエネルギーや周囲からの手助けがなくなった時に必ずやってくる。だから、今お前たちの手元にある脱税マネーはただのラッキーだったと思うべきであり、それをアテにして追い求め続けるのは極めて愚かである。お前たちの若さと可愛さに価値を感じているオジ達の収入は年々上がるのに反比例して、お前たちは年々歳を取り、今の可愛さを維持することは難しくなる。そして、下からは次々と若くて可愛い今のお前らのような子たちが出てくるからだ。

貯金の代わりに出来る事

話が逸れたが、「いつ死ぬか分からないから」「今が楽しいから」といった理由で、今をただ生きてしまうのではなく、何十年後にも今の暮らしや今以上の暮らしが出来るための努力を本当にしておいた方がいい。

たとえ、現実的に貯金ができないとしても、今この瞬間から無料で出来る貯金のようなものがある。それは、大切な人に優しい言葉をかけることだ。それによって、二人の関係がその時々で豊かになるのはもちろんのこと、もし相手がいつか自分にとって憎い相手に変わってしまった時でも、あなたの贈った優しい言葉はいい働きをしてくれる。復讐を考える必要もなく、あなたの手を汚すこともなく、優しい言葉は別れと共に相手に痛みを残してくれる。

明日、もしもあなたが生きていなかったとしても、それでもまた優しい言葉はいい働きをしてくれる。贈った言葉は相手の心に残り、いつまでも思い返してもらえる。優しい言葉というのは、贈られた相手が思い返して苦しくなるほどの武器にもなるし、生きていきたいと思えるほどの勇気や希望にもなってくれる。だから、大事な人にはなるべくたくさん優しい言葉を贈って欲しい。人に贈った優しい言葉は、未来の自分を守るための資産になってくれるはずだから。

妹尾ユウカ

独自の視点から綴られる恋愛観の毒舌ツイートが女性を中心に話題となり、『AM』や『AERA.dot』など多くのウェブメディアや『週刊SPA!』『ViVi』などの雑誌で活躍する人気コラムニスト。
その他、脚本家、Abema TVなどにてコメンテーターとしても活動するインフルエンサー。

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