#37 「将来、子ども欲しい?」/妹尾ユウカ
SPECIAL COLUMN
#37 「将来、子ども欲しい?」/妹尾ユウカ
28歳になってから、久しぶりに会う友達との集まりがどこか変わってきた。まず、お店を予約せずに「とりあえず集合」なんてことはなくなり、恋愛の話も惚れた腫れたの勢いではなく、現実を見据えたトーンに落ち着いてきた。そして最後には、かなりの確率で「子ども欲しい?」という話題にたどり着く。
今すぐ欲しいと言う人もいれば、まったく興味がないと言う人もいる。けれど、どちらの言葉の奥にも「後悔したくない」という同じ気配が漂っている。子どもを産まなかったことを後悔したくない。今の仕事や自由を手放して後悔したくない。立場は真逆なのに、恐れているものはよく似ている。
もしかしたら私たちは、「子どもが欲しいかどうか」を語っているようで、実際には「自分の人生をあとから否定したくない」という気持ちを守っているだけなのかもしれない。
1 後悔は子どもの有無では決まらない?
将来、子どもを持たなかったことを後悔するかどうかは、単に「子どもがいるかいないか」で決まる話ではない気がする。日々をどう扱ってきたか。自分の人生をどんな基準で見つめてきたか。そうした癖のほうが、もっと静かに人生の幸福度を左右していくのではないだろうか。
後悔しやすい人は、自分の人生をいつも他人と比べている。誰かより進んでいるか、遅れていないか。平均点から外れていないか。そんなふうに人生を査定していると、他人が持っているものを手に入れられたときにだけ、ようやく安心できるようになってしまう。
不安の埋め方も同じだ。人との関係を深めたり、自分と向き合うことを後回しにして、とにかく分かりやすい「出来事」で埋めようとする。結婚、出産、昇進、マイホーム。チェックリストを消していけば、いつか落ち着けるはずだと信じているのかもしれない。
けれど、イベントは通過した瞬間に終わる。その考え方の癖を変えない限り、何度通り過ぎても、結局また自分自身や誰かとの関係と向き合わされる。そこに気付かないままでは、後悔の多い人生になってしまうかもしれない。痛みや制約を避け続けた人生には、残るものも少ない。
2 後悔のない人生のために今できること
若い頃は子どもを強く望んでいなかったのに、40代以降になって「子どもを持たなかった」という事実が急に突き刺さる人がいるらしい。けれど、その痛みの正体は、おそらく子どもがいないことそのものではない。子ども以外に、人生の意味を回収できる場所が見当たらないことへの焦りだ。比較で生き、不安を幻想で埋めようとすると、「持たなかったもの」だけがやけに大きく見える。
「凡人ほど子どもを持つことで救われる」という側面は、確かにあるのかもしれない。人生の意味や達成感を自分一人では回収できなかった人にとって、子どもが拠り所になることはある。ただし、それは「人生を豊かにする道具として子どもを設ける」という話ではない。子どもは、空白を埋める装置でも、後悔を回避するための保険でもない。
問題は一貫して、「子どもがいるかどうか」ではない。子ども以外に、人生の意味を回収できる場所を持っているかどうかだ。
仕事でもいい。趣味でもいい。誰かとの関係でもいい。自分で選び、自分で引き受け、「これは私の人生だ」と言える実感がいくつかある人は、子どもを持っても持たなくても後悔しにくい。選ばなかった道を、あとから呪わずに済むからだ。
3 あなたは何を引き受けて生きていく?
あなたは本当に「子どもが欲しいかどうか」そのものに悩んでいるのだろうか。もしかしたら、自分の人生をライフイベントでしか評価できなくなっているだけではないだろうか。
28歳前後という年齢は、そうした違和感が表に出てくる時期だ。これまで勢いで押し進めてきた人生が、「このままでいいのか」と問い返してくる。けれど、その違和感は迷いであると同時に、自分の人生を主体的に引き受ける準備が始まったサインでもある。
私たちは、正解を探す人生から、「これは私が選んだ」と言える人生へ移行する入口に立っているのかもしれない。

妹尾ユウカ
独自の視点から綴られる恋愛観の毒舌ツイートが女性を中心に話題となり、
『AM』や『AERA.dot』など多くのウェブメディアや『週刊SPA!』『ViVi』などの雑誌で活躍する人気コラムニスト。
その他、脚本家、Abema TVなどにてコメンテーターとしても活動するインフルエンサー。





