#28「男に尽くしたところでね」

SPECIAL COLUMN

#28「男に尽くしたところでね」/妹尾ユウカ

いわゆる「男に尽くす女」ってのは、そんなに魅力的なのでしょうか。それにしては、尽くされた男がそのことに心から感謝をしていたり、尽くす女に惚れていることって全然ないと思いませんか。
それなのに、尽くすことをやめない女がいるのは、「喜ばせたいから」や「助けたいから」なんて理由ではなく、「尽くすことでしか、その男の隣にいられないから」なのではないでしょうか。もっと言えば、「愛されたいから」ですらなく、「自分のことが好きになりたいから」だったりするのではないでしょうか。

まず、本当に献身的な人間というのは、家族や友達などに対しても、惜しみなく尽くすことができますし、「献身さ」が男にだけ発揮されることはありません。彼女たちが男に見せる「献身」は、あくまで自分が嫌われないための手段なので「自分への献身」とも言えるわけです。
とはいえ、私はその行いを非難したいわけではなく、ただ「それ損してると思うよ」とお節介を焼きたいのです。

「尽くすは女をサボること」

そもそも、「男に尽くす」って「女をサボること」でもあると思うんです。女としての魅力不足を尽くすことで埋めようとしてる。たとえば、したくもないのに料理をするとか、されたくないことを許すとか、無理をしてでも与えるとか。これら全て「そうでもしないと好かれない」と思っているから、やってることではありませんか?

もちろん、そうして尽くし続けて、粘り勝ちを狙うのも一つの手だとは思います。相手がそれほどモテるタイプではなかったり、恋愛に対して消極的だったり、あるいは心が弱っていたりする場合などには有効かもしれません。「こんなに自分を想ってくれる人は他にいない」と錯覚してもらえることもあるでしょう。しかし、それで幸せになれるとは限りません。なぜなら、粘り勝ちで得られる関係のほとんどは「尽くすことでしか相手に必要とされない関係」だったりするからです。

「自分のための努力をしないと」

恋愛は本来、お互いが魅力を感じ合い、対等に関係を築くものです。しかし、自分が何かをしてあげなければ相手は振り向いてくれない、必要としてもらえない。そんな関係では、尽くす側は常に努力し続けなければならない立場になり、心のどこかで「尽くすことをやめたら捨てられるかもしれない」という不安を抱え続けることになります。

おまけに、その努力の方向性は、自分の魅力を磨く努力ではなく、相手に奉仕する努力になるので、もしも、振り向いてもらえたり、交際に発展したとしても、自尊心は置いてけぼりで、ずっと低いままだったりします。いくら頑張っても、そのうち当たり前になり、感謝されることも少なくなり、「尽くすことが前提の関係」になってしまうなんて、あまりに損だと思いませんか。

「5年後も今の自分でいたいですか?」

尽くすことそのものが悪いわけではありません。ただ、魅力不足を補うために「尽くす」という手段を取っても、「それがあなたに幸せをもたらしてくれる可能性は低いよ」ということ。ついでに、もしあなたが「自分のことを好きになりたい」という理由で、誰かに尽くしているのであれば、それももったいないからやめるべきです。「自分には価値がないから、どんなに辛くても存在意義がないよりはマシ」と尽くしてしまう人もいるみたいですが、自分の存在意義そのものを他人になすりつけてはいけません。常に他責になってしまうし、承認欲求と被害者意識だけが強い人間になってしまいます。

これは#22『あなたの恋が上手く行かないのはね、』で深掘りした話ですが、誰かに尽くして、恋愛に夢中になっていると、小手先の充実感が得られますよね。でも、そうやって自分の問題と向き合わず、誤魔化し続けてしまうとどうなるか。あっという間に、無知でイタいおばさんが出来上がります。あなたの今の生活や生き方を5歳年上の人がしていたらどう思いますか?もしも、「それはヤバい」と感じるなら、5年なんてあっという間なので、年内いっぱいがやめどきです。自分の生き方の変えどきです。でも、年内なんてぬるいこと言っていると、来年もきっとやめられないので、やめるなら今日かもしれませんね。他人に尽くしてきた熱量を自分に注いでみませんか。

妹尾ユウカ

独自の視点から綴られる恋愛観の毒舌ツイートが女性を中心に話題となり、
『AM』や『AERA.dot』など多くのウェブメディアや『週刊SPA!』『ViVi』などの雑誌で活躍する人気コラムニスト。
その他、脚本家、Abema TVなどにてコメンテーターとしても活動するインフルエンサー。

Instagram
Twitter
Official Blog

MORE